(劇場版・聖獣聖獣事件後、アーキルたちが後片付けでまだ滞在している時の話です)
「さぁ、召し上がれ」
私、カタリナ・クラエスは揃ったいつもの友人たちと義弟にそう言ってお菓子とお茶を勧めた。
「わぁ、これはムトラクのお菓子ですか?」
目を輝かせてソフィアが聞いてきた。
「うん。昨日、少しだけ商隊の皆の様子を見に行った時に、いっぱい買ってきたんだ」
ムトラクという異国から商隊がやってきて、ソルシエで大きな事件が起き、しばらくたった。
後処理に追われる彼らのことが、気にかかり少しだけ様子を見に行ってきたのだ。
その際に売っているお菓子をたくさん買ってきた。
『お金はいいから持っていきな』なんて言ってもらったけど、これから物入りになるだろうからと、しっかりお金は払ってきた。
商隊に頑張って欲しいといっぱい買ってきたら、一人では食べきれない量になってしまったので、お茶会で消費したいなと皆に声をかけてみたのだ。
昨日の今日なので無理かなと思ったけれど、皆が集まってくれてとても嬉しい。
「カタリナは一人で商隊へ行ったのですか?」
ジオルドがなんだか黒っぽい笑顔でそう聞いてきた。
ん、なんだか機嫌が悪い?
「思い立ったらすぐだから、気づいたらもう行ってしまっていたんですよ。あちらで食事まで一緒にしてきたみたいで」
キースが困ったような顔でそう言って、聞いたジオルドはため息を吐いた。
「あっ、大変な時だからいいって言ったんですけど、ぜひにと言われてしまって、そんなに食べたり、長くいて迷惑をかけたりしませんでしたよ」
大変なところにお邪魔して失礼な奴だと思われたのだろうと、私は慌ててそう否定した。しかし、
「義姉さん、そこじゃないんだよ」
「ええ、そこではないです。カタリナが一人で行ってしまったことが問題なのです」
二人はそう言って首を振った。一人で行ったことが問題ということは、
「もしかして二人も商隊に行きたかった?」
そういうことかと思って聞いたのだけど、二人はまた首をふった。
え~じゃあ、どういうことなのよ。そこで、
「私はまた行きたいと思っていました」
ソフィアがキラキラした目でそう言ってきた。鼻息もやや粗いほどの勢いだ。続いてマリアも声をあげた。
「私も、もっとムトラクのお菓子やお料理について商隊の方々聞いてみたいです」
マリアは前の時、色々と熱心に聞いていたものな。
そしてソフィアはあの舞台で完全にオタクの血が覚醒していたものな。
私も舞台もすっかり魅了されちゃったのだけどね。そう思ったのはメアリも一緒だったようで、
「とても素敵な空間でしたものね。私もできるならまた行きたいですわ」
頬に手をあて微笑みながらそんな風に言った。そんな私たちの話を聞いて、
「俺も行ってみたい。動物のショーとかあるんだろう」
子どもみたいにわくわくした顔でそういうアラン。
そういえば女子たち以外はあの素晴らしいショーを見れていないんだった。
「そうですね。動物のショーはすごかったですね。でも歌や踊りも本当に素敵だったんですよ」
私は見ていない男子たちに手振り身振りで舞台の素晴らしさを伝えた。
他の女子たちもそれに付け足す形で素敵だったことや心惹かれたことを話した。
話を聞き終わり、一番に口を開いたのはニコルだった。
「それはぜひ見てみたいな」
顔はいつもの無表情のまま目をキラキラさせていた。
「そうですね。こうして改めて聞くとすごく興味がわきますね」
キースも興味深そうな顔でそう言い、
「そうだよな。このままじゃあ、俺たちは見られないままだな。見たいよな」
アランも二人に同意し、みたいみたいと連呼しだした。
そんな弟を見て苦笑しつつ、ジオルドが提案してくれた。
「あちらもまだ後処理が残っていてすぐにとは行かないかもしれませんが、落ち着いたらソルシエからの依頼ということでもう一度、舞台でのショーをお願いしてみましょうか?」
「そんなことできるんですか?」
もう一度、あのショーを見てみたいと思っていた私は身を乗り出して聞いていた。
「あちらに確認してみないとなんとも言えないですけど、依頼としてちゃんと報酬を払えば、無下にはされないと思いますよ」
「それじゃあ、またあのショーが見られるかもしれないんですね。すごく嬉しいです。ありがとうございます」
発案者のジオルドにそう笑顔でお礼を言えば、
「いえいえ、僕もその素晴らしいショーというのに興味が出てしまったので、いいんですよ。ただカタリナ、今後は一人で商隊に行くのは控えましょうか」
「あっ、はいご迷惑になると悪いですものね」
私がそう言うと、ジオルドが小さな声で何か呟いた。
「これ以上、誑し込まれると困りますからね」
「ジオルド様、なんて?」
「いえ、ショー楽しみですね」
「はい」
そうして私はまた見られるかもしれない素晴らしいショーに思いをはせた。